世界で最も難しい蕎麦を打つ一日 | オン・ザ・ライン | ボン・アペティ

5,640 文字

A Day Making Some of the World’s Most Difficult Soba Noodles | On The Line | Bon Appétit
“Uzuki is so special because our restaurant is making 100% buckwheat noodles every day by hand.” Bon Appétit spends a da...

わたしは25年間宇月という店のマスターをしております。うちの店が特別なんは、毎日100%そば粉で手打ち蕎麦を作っているからなんです。これがほんまに難しいんですわ。グルテンもないし、のりもない。普通の蕎麦屋さんやったら20%くらい小麦粉を使うんですけど、うちは違います。技術が難しいんで、瞑想の心が一番大事な秘訣なんです。
わたしの指は、そば粉の中身が見えるんです。そば粉には病気の予防に効果がある成分がたくさん含まれてるんで、それを皆さんに伝えていく研究を続けるのが、わたしの人生なんです。
はい、こんにちは。わたしはコタニシュウです。ここが私の店、宇月です。ご案内させていただきます。
ここがカフェで、お客様の待合スペースです。こちらが店内になります。19世紀のブルックリン・グリーンポイントと日本の伝統的な蕎麦屋を組み合わせたデザインになってます。うちのコンセプトは、ただの飲食店やなくて、瞑想の場所みたいなもんです。
それでは始めましょか。今は朝10時です。蕎麦を打つ前に、まずダックブロスを作らなあきません。このダックボーンとチキンボーンは昨日から仕込んでます。これがうちの看板メニューの鴨しおそばとうみおそばの出汁になります。
うちでは3種類の鴨を使います。中国の北京ダック、日本の焼き鴨、フランスの鴨のコンフィです。これが鴨の骨とチキンボーンを合わせたものです。鴨の骨だけやと鉄分が強すぎるんで、チキンボーンと合わせることでバランスを取ってます。
お水を入れて、コンベクションオーブンの温度も完璧です。6時間はほかの具材と混ぜたくないんです。シンプルな出汁の旨味を引き出すためです。温度は華氏208度に設定して、6時間かけてゆっくりと煮込みます。沸騰させすぎると鉄分が強くなってしまうんで、弱火でコトコト煮込むんです。
このダックブロスは、こちらの材料から取っただしと合わせます。うまみブロスのポートフォリオをチェックしとかなあきません。4種類のシーズニングと高級なコンブを使ってます。鴨しおそばのために全ての材料を挽いて、このスプーン2杯を混ぜ合わせて完成させます。
挽く前にバランスをチェックしとかなあきません。塩味が強いものもあれば、苦みの強いものもあるんで、チェックして調整せなあきませんからね。
今日は日本から大きな鮪が入るんで、包丁を研いどかなあきません。これは柳刃包丁で、お魚を切るための日本の包丁です。片刃になってます。20年使い込んでます。
少しお水をつけて、このように研ぎます。これは極めて細かい角度です。試し切りをして確認します。これは清掃用具です。最後に刃先を確認します。はい、使える状態です。
これは野菜用の薄刃包丁です。日本の料理人が長い野菜を切るときによく使います。大根なんかを真っ直ぐに切るために必要なんです。紙のように薄く切れるか確認しときます。よし、使える状態です。
ほな、そろそろ蕎麦打ちの時間です。瞑想室に向かいましょか。これが瞑想のスペースです。蕎麦茶を点てる前の準備をします。中には炭が入ってます。お水を沸かして、焙煎したそば粉でお茶を点てます。
これは日課なんです。そば粉にはビタミンが含まれてて、天然の薬みたいなもんです。瞑想の後やと、生地作りに集中できるんです。技術が難しいもんで。抹茶みたいにお水にすぐ溶けます。この香りで一気に瞑想モードに入れます。深呼吸をして…はい、準備できました。蕎麦打ちを始めましょか。
これは打ち桶です。漆塗りが施されてます。漆は細菌から守ってくれます。10年以上使ってる桶です。これは作務衣です。本物の日本の料理人が着るもんで、デニムみたいな感じです。動きやすいんです。
これはシンプルな道具です。これが一番大事なんです。背筋を伸ばして、動きやすくするために使います。これがそば粉です。製粉所で挽いたばかりのもんです。4%の抹茶パウダーと混ぜます。そば粉1キロに対して40グラムの抹茶を使います。
これは冷たい料理用の蕎麦です。うちのデラックス刺身そばやサーモンウニそば、ウニイクラそばに使います。デラックス刺身そばには7種類の魚介が入ってます。抹茶の自然な苦みと魚介、例えばウニの甘みがええバランスを作るんです。
まず篩にかけます。篩にかけることで細かくなって、水と混ざりやすくなります。そば粉にはグルテンがないんで、水を吸いにくいんです。これは大事な工程です。篩にかけた後は雪みたいになって、抹茶パウダーも篩にかけます。こうすることで、それぞれがお水を吸いやすくなるんです。
ほな、混ぜ始めましょか。お水を入れる前の今の私の頭の中は、瞑想のおかげでセロトニンでいっぱいです。そば粉と抹茶からくるんです。このそば粉はニューヨーク州レスターで育ってます。レスターはニューヨーク市から車で6時間のところで、日本と似た気候なんです。自然の水はカナダのフィンガーレイクから来てます。これは100%オーガニックのそば粉です。
このお水は炭でろ過したもんです。素早く混ぜなあきません。もう体が動き始めてます。頭の中は空っぽになって、360度見渡せる感じです。底まで見えて…そば粉が指を通して感じられます。全ての関節が動き出して、目を閉じて…鼻と指と耳の感覚だけを使います。
人はこれをゾーンとか瞑想ゾーンとか呼びます。今、わたしの体は自動的に動いてます。そば粉と踊ってるみたいな感じです。目を開けてしまうと表面だけにしか集中できません。100%感じるために目を閉じなあきません。今回は普段以上によく見えてます。
これが水廻しです。水は水、廻しは転がすという意味です。これが水廻しです。今の私の頭の中はとても幸せです。まるで生きてるみたいです。もっとお水を入れます。この動きを私は海の波と呼んでます。ボールに当たる波のようです。そして火山みたいにダイナミックな動きに変わっていきます。ええ感じになってきました。
生地の準備ができました。触るとわかります。耳たぶみたいな感触です。ええタイミングを待たなあきません。はい、完璧です。これが練りです。練りの工程です。中をもっと深く見たいんで、生地を2つに分けます。
これは私のオリジナルの技術です。普通は一つの生地を練るんですけど、私のスタイルは2つの生地に分けます。こうすることで食感が素晴らしくなります。これが出しです。出しは空気を抜くという意味です。陶芸みたいに、生地から空気を全部抜きます。この部分から素早く壊していきます。
これがそば粉です。真ん中の部分だけ白くなります。平らにしていきます。これが手延ばしです。手で延ばすという意味です。麺棒を使い始めます。これは麺棒です。とても重いです。これは特別な木で作られた限定品です。職人さんはもう亡くなられて、日本でもこの麺棒は作れる人がおらんようになってしまいました。日本で最も古い道具の一つです。20年以上使ってます。
今から1.5ミリまで延ばしていきます。途中で止めると割れてしまって、修復不可能です。グルーがないんで、とてもデリケートな時間です。
今は昼の12時です。日本からお魚が入ってきます。止められません。お魚をチェックしながら、延ばし続けます。長い麺棒を使い始めます。これは巻き棒です。巻きは水分を守るという意味です。生地が大きくなっていくんで、同時に包んでいく必要があります。
今は四角く形を整えてます。今はガラスみたいに割れやすくなってます。これは猫の力です。猫の力やと、コントロールしやすいんです。小口智さんから学びました。彼はもう何年も前に亡くなられました。私が最後の弟子です。
彼は料理人であり、起業家であり、建築家であり、そば打ちの達人でした。彼のエネルギーは私の肩に宿って、一緒に研究を続けています。そば粉には長い歴史があって、たくさんの栄養があり、自然の薬なんです。多くの病気の予防のために研究を続けています。
はい、準備できました。切るだけです。この工程を畳みと呼びます。生地を畳むという意味です。美しいでしょ。4回畳んでこうなります。これが切り台です。平らにします。これが布巾です。これは水分を保つための箱です。
これはそば切り包丁です。そばはそば粉、切りは切る、包丁は包丁という意味です。この柄はサメの皮です。時には4時間も切り続けることがあるんで、この握りが助けになります。これは2000ドル以上します。これは安いほうです。長年の思い出があります。私の給料は全部道具に使いました。カメラみたいなもんです。これが私の情熱です。26年経っても変えられません。まだ現役です。日本の道具は強いです。
行きましょか。時には何時間も休みなく切り続けます。麺を分けて、すぐにこの箱に入れます。2、3時間寝かせることで食感がもっとよくなります。軽く茹でることもできますが、宇月では必ず2、3時間寝かせます。
次は刺身用の鮪を下ろします。これはブルーフィンマグロです。見せていただきましょか。これはサトルさんです。ニューヨークの有名な寿司職人です。いつもええ魚を見つけてくれます。味と食感、匂い、色を確認させていただきます。ええですね、ありがとうございます。
あ、これは北海道のウニです。ウニイクラそばとお刺身用です。とても美しいですね。よし、魚を切っていきましょか。
これは本マグロです。日本から来ました。マグロには3つの部位があります。血合い、赤身、トロです。まず血合いの部分を取ります。血合いは鉄分の味が強いです。この部分は料理して食べるのがええです。
次は中落ちを取ります。中落ちはより美味しいです。これはハラミの皮です。硬い部分は全部スタッフミールに使います。無駄にはしません。
こんな感じで寿司ブロックを作ります。刺身を作りやすいように。デラックス刺身そばには2切れずつ入ります。赤身と血合いを混ぜます。このブロックで60人分くらいです。
位置を決めて、まっすぐ切ります。同じサイズで…指一本半くらいの大きさです。こんな感じでまっすぐ切ります。これが赤身です。私は赤身の方が好きです。本物のマグロの味がよく分かります。トロは食感を楽しむ感じです。
よし、シェフ、これを冷蔵庫に入れといてください。ありがとう。
では、そばとうふを作りましょか。そばとうふは出汁と山葵とネギで作る、シンプルな材料ですが、作り方がユニークです。普通の豆腐は大豆とにがりと塩を使うんですけど、宇月のそばとうふは少し違います。豆乳を使って、葛粉も使います。これは他のでんぷんよりもずっと健康的で、値段も10倍します。コーンスターチを使うと口の中でトロッと溶けます。これは根菜から作られてて、ポテトスターチやコーンスターチ、タピオカスターチよりも健康効果が高いんです。世界で最高のでんぷんです。
少し塩を入れて混ぜます。それから少し砂糖を入れて、これは胡麻ペーストです。天然の胡麻ペーストです。香りが広がって、濃厚な味わいになります。このとうふは一日に2回作ります。
でんぷんを使って良い食感を出すんで、直接熱を加えることはできません。煮立たせなあきません。湯煎で作ります。こんな感じです。これが重要です。温度を少しずつ調整していきます。こうやって混ぜ続けます。トロミが出るまで。これはとてもデリケートな味なんで、直接熱を加えると苦くなってしまいます。5分ほど煮込まなあきません。
はい、トロミが出てきました。もうすぐです。最後にそばの実を混ぜます。これは既に茹でたものです。ええ感じに混ざります。そばの実がキヌアみたいな食感を出してくれます。
流し箱に入れて…2層になってこんな感じです。空気を抜いて…はい、準備できました。1時間冷やせば完成です。
次は明日用にそばの実を挽きましょか。これがそばの実です。日本には11種類の品種がありますが、ニューヨークには50種類以上あります。どのそばの実が特徴的で、より良い味を出せるか、まだ研究中です。
これは石臼です。少しずつ挽いていきます。一度にたくさん挽くと均一に挽けません。もっと細かく挽けないか探してます。瞑想みたいなもんです。
そばの実の中には酸っぱくて美味しくないものもあるんで、味と食感を見て選んでます。収穫時期は10月です。今は、どのそばが美味しくて、将来性があるか調査せなあきません。ええ種が見つかったら3年分確保します。そば粉は普通の小麦の3倍の値段がします。月に2000ドル以上発注してます。
はい、挽き終わりました。明日用に保存しときます。味は良いです。とても新鮮です。
今は午後4時です。営業の準備をせなあきません。セラミックの準備に行きましょか。2回目の瞑想の時間です。開店前に。
セラミックは私にとってとても大切です。陶芸には高い集中力が必要で、同時に瞑想もできます。店は夜10時、11時まで止まることなく続きますんで、もっと集中力を高めなあきません。
陶芸を始めて2ヶ月ですが、今では90%の器を自分で作ってます。でも、この食感は似てきたと思います。粘土をコントロールしやすくなってきました。
もう5時になります。この粘土は終わりにして、キッチンに戻りましょか。まずは大根の皮を剥きます。次は大根を切ります。刺身用の生わさびを擦ります。わさびは開店前に新鮮なうちに擦らなあきません。
これがダックブロスです。もう出汁は出来上がってますが、うちの店、宇月では今朝のおかかだしを2杯加えることで、さらに旨味が広がります。これで完成です。
今は午後5時です。靴を履き替えます。これで夜の営業に向けてより集中できます。外の看板を出しに行きます。開店の合図です。これが日本のそば屋です。
はい、お客様、開店しました。ご覧いただき、ありがとうございました。これから営業を始めます。ありがとうございました。さようなら。

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