食物保存がひとつの国を支えた

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Food That Preserved A Nation
We eat preserved food everyday. Modern day conveniences offer canned goods, even deep freezers for meat and vegetables. ...

みなさん、気づいてはるかどうか分かりませんけど、私らは食品保存に囲まれた世界で暮らしてるんです。スーパーマーケットに行ったら、冷凍食品売り場があって、冷蔵食品があって、缶詰があって、箱詰めの食品もありますやん。でも18世紀には、こういった保存方法は一つもなかったんです。それでもアメリカは食品保存に頼って発展してきたわけです。
食品保存は18世紀に発明されたわけやないんです。その起源を探るためには、古代エジプト人や、ローマ人、古代ギリシャ人、バイキングにまで遡らなあかんのです。そこで様々な保存方法が生まれてきたんですわ。
一番シンプルで古い技術が乾燥なんです。どないやって食べ物を乾燥させるんでしょう?水分を抜かなあかんのですが、ある食材では自然に起こります。特に穀物は、アメリカで何百万トンも収穫される、とうもろこしのような作物は、畑で自然に乾燥するんです。
とうもろこしの穂を見てみると、最初は緑色で育ちますが、熟してくると乾燥し始めて、茎で垂れ下がってきます。自然の皮に包まれたまま、畑で乾燥するんです。私らは待つだけでええんです。シーズンの終わりに収穫して、乾燥状態を保つだけでいいんです。それだけです。
畑で既に完璧に乾燥してるんです。小麦や大麦、ライ麦、豆、お米なんかも同じような感じです。基本的に自然に保存されるわけです。例えば、古代のネイティブアメリカンは、とうもろこしを主食作物として一年中食べてました。乾燥させて保存できたからなんです。
でも乾燥させるのは穀物だけやありません。いろんな食材を乾燥させることができます。例えば肉なんかは、薄く切って日干しにするだけです。ちょっと変に聞こえるかもしれませんね。肉は腐るんちゃうかって思われるかもしれません。でも十分薄く切れば、腐る前に急速に水分が抜けて、長持ちする乾燥品になるんです。
穀物ほど長くは持ちませんけど(穀物は10年や20年持つこともある)、それでもええ保存方法なんです。ただし、脂っこくない肉に限ります。牛肉や色んな魚は単純に乾燥させられますが、豚肉や鶏肉、アヒルなんかの脂っこい肉には向いてません。
地域によっても違ってきます。乾燥して特に寒い環境やったら、乾燥は完璧な方法です。北ヨーロッパのストックフィッシュ(干し魚)なんかは、環境を利用して自然に凍結乾燥させたようなもんです。塩も何も使わず、ただ乾燥させるだけで完璧なんです。
日干しに向いている代表的な食材は色んな果物です。特にぶどうを干してレーズンにしたり、アプリコットやりんごを乾燥させたり。ネイティブアメリカンはかぼちゃを乾燥させて、何ヶ月も後に素晴らしいサコタッシュ(とうもろこしと豆の煮込み料理)を作ったりしてました。
でも、全ての気候や季節が日光での乾燥に適してるわけやありません。日光がない場合もあるし、全然乾燥しない地域もあります。そういう場合は別の方法で乾燥させなあかんのです。弱火を使うか、調理や燻製にならない程度に熱を加えるんです。暖かい程度のオーブンを使うか、家の暖炉の上なんかの、いつも乾燥している場所を利用します。
そこでハーブや穀物、花なんかを長く保存するために乾燥させるんです。乾燥過程での熱の使用は、自然と燻製につながっていきます。燻製は今日でも人気がありますが、それは素晴らしい風味が出るからです。今日では主にホット・スモークで、ほぼ調理技術みたいなもんです。当時はその風味も欲しかったかもしれませんが、18世紀では保存が重要な目的だったんです。
彼らはコールド・スモークをしてました。表面に付く煙の層には、バクテリアや虫から食品を守る化学物質が含まれてるんです。燻製は殆どどんな環境でもできました。スモークハウスがあれば簡単ですが、誰もがスモークハウスを持てたわけやありません。でも殆どの家には大きな暖炉があって、煙突の上の方に物を吊るして燻製にすることができました。
19世紀、20世紀になって暖炉が変わってしまい、家の中で燻製する場所がなくなったことを嘆く人もおりました。でも屋外でも燻製はできました。キャンプファイヤーの上で原始的な方法で燻製されることも多かったんです。小枝で作った棚で食材を火の上に持ち上げ、何日もかけて燻製にしました。日光で乾燥も進みながら、煙と火の熱で燻製になっていったんです。
私らの時代では、最初に塩漬けにしてから燻製にするのが一般的でした。燻製は特定の種類の肉や部位に向いてます。18世紀で一番人気があったのはベーコンです。当時のベーコンは今とはちょっと違うかもしれませんが、今でもほとんどのベーコンは燻製か塩漬けされてます。今はその風味を求めてますが、18世紀では何ヶ月も持たせるための保存が目的でした。今のベーコンはそんなに古くないし、冷蔵があるので気にする必要もないんです。
燻製は何百年、何千年も前から人気がありました。行軍中のローマ兵が燻製ソーセージを食べてた話も残ってます。魚は何通りもの方法で燻製にできました。原始的な方法では小さな棚の上で魚を燻製にしたり、18世紀では工業的に、魚を軽く塩漬けにしてからここのスモークハウスのような大規模な施設で燻製にしたりしました。
食品保存のもう一つの古い技術が塩漬けです。塩漬けには色んな方法があって、何千年も前から行われてきました。古代エジプト人が鳥を塩漬けにしている図もあります。塩漬けに向いている食材がいくつかあって、塩漬けの技術や材料によって、長期間保存できるようになるんです。
肉の保存は本当に難しくて、塩漬けは肉の保存の最も一般的な方法の一つでした。でも塩漬けできるのは肉だけやありません。野菜や果物も塩漬けにできます。肉を保存する時は、普通乾式か湿式の塩漬けを使います。乾式は塩を直接振りかけて、湿式は塩水に漬ける方法です。
乾式保存では、例えば牛肉を塩でコーティングして、数日間外気にさらします。できるだけ水分を抜くんです。それから塩を全部落として、塩の入った樽に牛肉を詰めます。塩がゆっくりと水分を抜き続け、できるだけ深く浸透して、バクテリアの繁殖を防ぐんです。
でも、湿式塩水漬け(当時はピクルスと呼んでました。酢を使う本当のピクルスとは違いますが)の方が向いているものもあります。例えば豚肉なんかがそうです。同じように豚肉を塩でコーティングして外気にさらし、塩の入った樽に詰めて、その上から塩水を注ぎます。これによって塩が肉の中まで浸透し、柔らかい製品になります。豚肉は塩漬けに最適な食材の一つですが、塩水の中に漬かったままにしておく必要があります。
塩漬け豚肉の樽から肉を取り出す時は、何度も詰め直さなあかんかもしれません。この塩漬け豚肉は1年ほど持ちますが、一度樽を開けたら、何度も詰め直す必要があります。その都度、塩水を取り出して、もう一度煮沸して殺菌し、樽に詰め直すんです。
これで一シーズン、一年間は持ちます。次の豚を塩漬けにする時期までです。塩水の最終的な目的は、肉を空気から守ることです。肉を密閉して良い状態を保つんです。この塩水は非常に濃い塩水で、色んな場面で使われます。殆どの家庭では、家族用の豚を飼っていて、秋の収穫期の終わりに屠殺し、残りの一年間のために塩漬けにしました。
牛肉と豚肉の他に、当時よく塩漬けにされていたのが魚です。魚は塩漬けに本当に向いてます。普通小さな切り身で、塩がすぐに中まで浸透するんです。色んな方法で塩漬けにできました。漁に出る時は大量の塩を持って行って、港に戻る前に腐らないように予め塩漬けにしてから、もっと本格的な塩漬け処理をしてました。
もう一つの代表的な塩漬け食品で、今ではあまり意識されてないのがバターです。今日、塩バターがあるのは味が好まれるからですが、当時の塩バターは、もっと塩分が多くて、保存が目的でした。
当時のレシピを見るのは面白いですね。一つのレシピの中で、異なる種類の塩、異なる粒度の塩を使ってます。肉に浸透させ続けるには、異なる種類の塩が必要だということを知ってたんです。一種類の塩だけやと、うまくいかないし、適切な味も出ないんです。
時には普通の塩(塩化ナトリウム)だけでは、特にボツリヌス菌のような特に悪い微生物から肉を守るのに十分やないこともあります。ボツリヌス菌から守るには、硝酸ナトリウムや硝酸カリウムのようなものを使わなあかんのです。これらは多くの塩漬けレシピに含まれてます。
この塩漬け肉は食べるには強すぎると思われるかもしれません。ある意味その通りです。今日、塩漬け肉製品があまり見られないのはそのためでしょう。すぐに調理して食べられるもんやありません。強すぎるんです。塩漬け牛肉や塩漬け豚肉、塩漬け魚を調理するには、水に浸して、何度も水を取り替えて、また水を足さなあかんのです。食べられるようになるまでに丸一日かかることもあります。
18世紀では、塩水に漬けることをピクルスと呼んでましたが、本当のピクルスは酸性環境での保存です。基本的に食材を酢に漬けるんです。今日の代表的なものは、ピクルスエッグ(酢漬け卵)やピクルスオニオン(酢漬け玉ねぎ)ですが、これらだけやありません。今日も18世紀も、他にもたくさんの食材をピクルスにしてました。
肉もピクルスにできますが、通常は調理してから酢に漬けます。当時は「カラードミート」と呼ばれる製品がありました。これは肉を色んなスパイスと一緒に巻き上げて、調理し、時には乾燥させてから酢漬けにしたものです。こうすると柔らかい肉になって、とても独特な味わいになります。これは18世紀でも今日でも、最も一般的な食品保存方法の一つです。誰でもお店に行って瓶詰めのピクルスを買えますし、今日の多くの食品は、保存のために特定の酸含有量で保存されてます。
面白いのは、食品保存技術として始まったものが、今日では味と食感の違いとして求められてることです。ピクルス食品の爽やかさと程よい塩気を求めるようになったんです。最初は全て保存が目的やったのに、今は全て味が目的なんです。
ピクルスでは食品を酸性溶液に漬けますが、食品自体に酸を作らせることはできないでしょうか?それが発酵なんです。
当時も今も人気のある発酵食品の代表格は、ザワークラウトです。これは本当にすごいんです。当時の貧しい人々の典型的な食べ物やった安価なキャベツを、薄くスライスして、少しの塩と一緒に層にして甕に入れると、自然に水分が出てきて、発酵し始めます。
キャベツに含まれる糖分が、そこにいる酵母によって発酵して、少しのアルコールと酸を作り出すんです。これが素晴らしい風味を作り出し、キャベツを保存します。もちろん発酵は18世紀だけのものやありません。何千年も前から世界中で使われてきました。特にアジアの素晴らしい発酵食品なんかがそうです。
ビールも発酵食品です。今日私らは楽しんで飲んでますが、18世紀では命の源でした。水を飲むのが安全でない場所でも、ビールは飲めたんです。ここでは単に穀物の糖分を発酵させてるだけです。もちろん、その風味も好まれました。
これはビールだけやなく、ワインでも起こってますし、乳製品でも発酵が使われます。乳製品では色んな種類の発酵ができます。ミルクを単に酸っぱくしたり、バターミルクにしたり、ソフトチーズやハードチーズを作ったりできます。どんな培養が行われるか、どれだけの塩が混ぜられるかによって、ミルクを数日どころか、何ヶ月も、何年も保存できるんです。
時には保存は生存のためやなく、一度に大量に手に入ったものを上手く使うためのものです。例えば果物が大量に収穫されたとき、無駄にしないための最善の方法は、アルコールに変えることかもしれません。ワインにしたり、さらに蒸留してブランデーにしたりします。
砂糖を使うのも食品を保存する別の方法です。通常は果物に使われます。果物は砂糖保存に本当に向いてるんです。これも何百年も前から行われてきました。ローマ人は蜂蜜に漬けてましたし、私らの時代では、砂糖をコーティングしたり、水分を抜いて砂糖で保存したりしてました。砂糖には抗菌作用があって、腐敗を防ぐんです。
果物で同じ効果を得る別の方法は、濃縮することです。通常は煮詰めて水分を抜き、糖分濃度を上げて腐らないようにします。ジャムやゼリーは今日でも使われてますが、単に果物を煮詰めて、時には砂糖を少し足すだけで、長く保存できます。
発酵が起きてることを知らなかった場合もあります。複数の保存方法が同時に行われることもあります。ソーセージはその完璧な例です。保存のために塩を入れ、スパイスを入れ、燻製にし、そして同時に発酵も起きてるんです。非常に複雑な製品で、複雑な風味があり、これら全てが合わさって保存食品になるんです。
今、みなさんの食品棚には缶詰があると思います。18世紀には缶はありませんでした。金属の缶は確かになかったんですが、ほぼ同じことをする方法はありました。缶詰では、食品を殺菌温度まで上げて、酸素から遮断して密封し、新しいバクテリアが入り込んで腐敗し始めるのを防ぎます。
18世紀には「ポッテッドミート」というものがあって、ほぼ同じことをしてました。このような小さな容器で、通常は細かく刻んだ肉を、たくさんの脂と一緒に調理します。必然的に脂が上に浮いて自然に密封され、さらに上に紙で封をして、一番上の脂が腐らないようにしてました。
時にはクラリファイドバター(澄ましバター)を上に足して密封することもありました。自然の脂の障壁で酸素から食品を守るんです。当時は瓶での保存もしてました。チェリーやイチゴなんかの丸ごとの果物を、水やアルコールに漬けて、長期間保存してました。
瓶は特別に表面積を小さくして作られ、中身に酸素が届かないようになってました。これらは全て、陶器やガラスの固い容器に入れられてました。今日なら金属を使いますが、当時は時として食品自体で空気から遮断することもありました。
特別な肉パイを作って、とても固いパイ生地で密封したんです。このパイ生地は食べるためのものやなく、保存のための密封が目的でした。今日、私らは肉パイの生地も食べたいと思いますが、当時は全て保存が目的でした。数週間後には生地は食べられなくなるかもしれませんが、中身はまだ食べられたので、中身を食べて生地は捨てたんです。
これら全ての食品保存技術がある中で、全ての技術を少なくとも一つの方法で使わなあかん人々がいました。それが軍隊です。特に当時の海軍の船乗りたちです。彼らは全ての保存技術を使わなあかんかったんです。陸から離れていて、食料を手に入れるのが非常に難しかったからです。時々魚を釣ることはできますが、それだけに頼ることはできません。塩蔵品を使い、発酵食品を使い、全ての技術を組み合わせて、何千マイルもの海洋航海を生き延びたんです。
冬のために食品保存が必要だと想像するのは簡単ですが、特に18世紀のアメリカでは、実際にはそれ以上のものがありました。食品保存なしには海を渡ることはできません。つまりここにたどり着くことすらできなかったんです。食品保存なしには東海岸から西部へ移動することもできません。食品保存なしにはアメリカは存在し得なかったんです。

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