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あのな、これが中国という国を動かしてる人らなんや。中国、最後のフロンティアとも言えるんちゃうかな。いや、それは宇宙か。ともかく、今までの私の中国旅行は国際的な話題を呼んでしもたんや。なんでかって?どうも、この国のええとこを見せたら共産主義のプロパガンダを作っとるに違いないって思われるからや。もう、ほんまにうんざりやわ。
ほな、中国を本気で試してみようと思うて、2,000キロもヒッチハイクして、変なとこでキャンプしたり、警察と一緒にタバコ吸うたり、ひょっとしたら地球上で一番有名な中国のトラック運転手になるかもしれん人と旅をしたりしてみたんや。
中国が、みんなが思てるような自由を制限して、社会信用システムを使うて、西洋を憎んでる国やったら、こんなことは全部できへんはずやろ?
ほなら、みんな、今日は大仕事があるで。私は揚州市の端っこまで来て、今日は500キロ行くつもりや。基本的な計画としては、1日500キロ行けたら…
「あんちゃん、元気?」
「はじめまして」
「はじめまして、兄弟」
「はじめまして」
「はじめまして」
「どこから来はったん?」
「イギリスです」
「イギリス、イギリス」
「ええ車持っとるなあ」
「BMWやな、ドイツの車や」
「そうそう」
ほなら、1日500キロ行けたら4日で北京に着けるはずや。それが計画や。休憩日が要るかもしれんし、できへんかもしれんけど、やってみよか。私のこととやりたいことを中国語で書いた紙を持っとるんやけど、これがほんまに役に立つんや。
「オッケー、オッケー」
「一人?」
「そうです」
「江蘇まで一緒に行ける?」
やった!友達できたわ。江蘇まで連れて行ってくれるんや。
「いや、いや、後ろでええよ」
「後ろでええよ」
「後ろでええよ」
「ありがとう」
ほな、この人らと一緒に行くことになったんやけど、めっちゃ速く運転するから、ええことも悪いこともあるな。最近事故の動画見すぎて怖なってもうてんけど…でも、早く着けるやろな。
この人ら、めっちゃ危なっかしい運転するけど、茹で卵くれはったわ。ええ人やなあ。前に座っとる私がウェイターみたいなもんやから、前にある卵を配らなあかんって。
これ、中国のレッドブルやと思うんやけど、カフェインの量が多すぎてイギリスじゃ違法なはずや。
この人ら、実は私のために予定を変えて、もともと行くつもりやった場所より遠くまで連れて行ってくれるんや。江衛まで行って、私はそっから北京に向かうんや。この辺で降ろしてくれて、彼らは常州に行くんや。
つまり、最初の予定の倍くらい遠くまで連れて行ってくれることになったんや。ほんまにありがたいなあ。
ほな、ここで早めの乗り換えや。ちょっと怖いけどな…
マジで、これが一番危険な部分やわ。中国の高速道路の路肩を歩かなあかんからな。でも、しゃあないんや。
人気のない高速道路のど真ん中におって、これ見つけたんや。見えるかな?墓地みたいなもんやな。見に行ってみよか。
ここにたくさんの土饅頭があって、まさに人気のない場所にあるんや。これは墓石みたいやし、これらはお墓かもしれん。電車やバスに乗らんと、こういう面白いもん見つけられるんや。
翻訳してみると…「ビールと歯」って書いてあるけど、それはちゃうやろな。「魯武玉」「姓朗」って「王燕」の横に書いてあって、子供を産んだって…これ、家族のお墓みたいやな。夜にここでキャンプしたら怖いやろうなあ。
おっと、パトカーが来たわ。たぶん少し面倒なことになりそうや…
「こんにちは」
「東に向かってます」
「4日で北京まで行こうと思ってます」
「次のサービスエリアで降ろしてもらえたら助かります」
「はい、はい、はい」
「ありがとうございます」
こうやって中国の警察から無料で乗せてもらえるんや。ほんまにええ人らやった。高速道路は危ないから歩いたらあかんって言うてくれて、次の車に乗せてもらうように言うてくれたんや。ここはサービスエリアやから、ここで寝たり食べたりしてもええって。ちょっと休憩して、また道路に戻ろうと思います。
今何時やろ?4時か。今夜はええとこでキャンプしたいなあ。
「どちらまで行かれます?」
「東に向かってます。最終的には北京まで行きたいんですけど、今夜は景色のええとこでキャンプしようと思ってます」
「ここまででええです」
「はい、大丈夫です」
「ほんまにきれいですね」
「ほんま、きれいやなあ」
中国語話せへんのが一番の問題やな。全部が誤解を生んでしまう。地図見たら、彼らの行く道の途中にキャンプ場があるんやけど、彼らは国立公園に行きたいと思ってると勘違いしてて、「そこまでは遠すぎて連れて行けへん」って言うてる。いや、あんたらの行く方向でええんやって…
また、中国のええとこは、みんながタバコくれることやな。
「はい、はい」
「歩きます」
「ありがとうございます」
「さようなら」
ええ人らやったわ。今日2回目の高速道路や。また警察に止められんようにせなあかんな。
今どこにおるんかさっぱりわからんけど、Googleマップで見たら近くにキャンプ場があるみたいや。なかったら、あの村のどっかでキャンプするしかあらへんな。
ここがそうかな?臓器売買されたりせえへんよな…
「すみません、ここでキャンプできますか?」
「はい、大丈夫です」
「ありがとうございます」
「生き延びます」
「ここで寝るんですか?」
「わかりました」
「ありがとうございます」
「さようなら」
なんがなんやらさっぱりわからんわ。キャンプ場でキャンプさせてもらえますか?って聞いたら、登録せなあかんって。ほな、どこで登録すんの?って聞いたら、ここに連れて来て、ここでキャンプしてええって…
ただの廃墟になった中国の建設現場の宿舎みたいなとこなんやけど。文字通り「登録できるとこに連れて行ったる」って言うて、ここでキャンプしてええって言うて、さっさと帰ってもうた。
あ、これ風力発電のタービン作っとったとこやわ。廃墟になった風力タービン工場や。
ここ、マジで不気味すぎるわ。一体ここはどこなん?ここでは寝たくないわ。寝たないわ。
なんやろな…「久しぶりに外国人が来たから、道路の向こうの廃墟になった中国の風力タービン工場に送り込んで笑うたろか」みたいな?
ここで寝たくないけど、選択肢なさそうやなあ。
ありがたいことに、ガソリンスタンドがあって食べ物も飲み物もあるから、そんなに悪くはないな。そうそう、冷えたビールもあるし。
この廃墟になった中国の風力タービン工場でできることと言えば、冷えたビール開けて、スナック食べて、朝が来るのを待つことくらいやな。明日は何が起こるんやろ?まあええか。
ほな、この変な風力タービン工場から出発して、東に向かって北京に行くで。かなりええ進み具合やと思う。一日で4分の1から3分の1くらい進んだんちゃうかな。今日に期待しとるで。
昨日は最悪やったけど…問題は、北京に近づけば近づくほど、人々の行き先が増えることや。それが難しくするんや。保定に南下して、そっから東に向かおうと思う。
この信頼できる紙さえあれば大丈夫や。「さようなら」
計画考えたで。この人は次の町まで行くんやけど、私はもっと遠くまで行きたいんや。東に向かって北京まで。ここは料金所やから、もっと遠くまで行く人がおるはずやろ…って、今日唯一の乗り物を断ってもうたんかもしれんな。
なんでか知らんけど、今日はこのベルベットのシャツ着とるんや。世界で一番暑い素材かもしれんのに。
中国語で「どこまで行くんですか?」を覚えるのに3週間もかかってもうた。
「わかりません、すみません」
残念ながら、このトラック運転手はここの町で止まるんや。ヒッチハイクしとる時に一番困るのが、町の真ん中におることや。出るのがめっちゃ難しくて、結局タクシーで町はずれまで行かなあかんようになる。最悪や。
「ありがとうございます」
「はい、はい」
「さようなら」
結局、タクシーで町はずれまで行かなあかんかったんやけど、「でもマイク、北京まで全部ヒッチハイクで行くって言うてたやん?」そうや、でも町の真ん中におったら超むずかしいんや。
そのタクシーの運転手も私の行きたいとこまで連れて行ってくれへんかった。
「はい、もう食べました。ありがとうございます」
ほんまにええ人やなあ。道で会うた人が「こっち来て」って言うて、水くれて、「あなたの国とわたしの国、どっちがええ?」って聞いてきたんや。私が彼の国の方がええって言うたら…
「ここに立って車を待ちます」
料金所におるんや。料金所大好きや。
これがな、みんな止まってくれて「手伝うよ」って言うてくれるんやけど、私は「大丈夫です、あそこに行くだけでいいです」って。
「やあ、兄弟。どこから来たの?」
「ロンドンです」
「そう、ロンドンです」
「英語話せるんですね」
「午後に座ります」
「はい、はい」
「ありがとうございます」
高速道路は歩きません。ここに立って東に行く車を探します。
「はい、はい」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
「ありがとうございます」
ほな、高速道路でヒッチハイクしようとしてたら、すぐそこに警察署があって、警察に質問されたんやけど、なんと昼ごはんまで買うてくれたんや。信じられへんくらいええ人らや。中国の警察大好きや。
「はい、問題ありません」
「ありがとうございます」
昼ごはん買うてくれた上に、ヒッチハイクの手伝いまでしてくれるんや。私が行きたい方向に行く車を止めてくれようとしてる。最高やろ?
ほな、1時間先まで行く人が見つかった。
「はい、大丈夫です」
「ありがとうございます」
「はい、はい」
「兄弟、さようなら」
「ありがとう、兄弟」
「さようなら」
すごいわ。昨日一緒に乗せてもらった人が、めっちゃええ中国の歌聴かせてくれたから、今それをBluetoothで流しとるんや。
マジで、これまでで最悪のヒッチハイクの日や。1時間もここに立っとってんけど…トラックの運転手に話しかけて友達作ってみよか。
「はい、さっぱりわかりません」
「ありがとうございます」
「はい、はい」
「ありがとうございます」
「さようなら」
「じゃあね」
この人ら、乗せてくれへんかったけど、スナックとジュースとミルクとイチゴのお菓子くれはった。
「ありがとう」
「さようなら」
「また会いましょう」
一体誰の馬鹿げたアイデアで北京までヒッチハイクしようと思ったんやろ。これはほんまにありえへんわ。もし到着できへんかったらどうすんねん?
この人ら「どっかまで連れてったるから、そっから車か電車乗ったら?」って言うてくれとるし、乗り物やから乗るわ。どこまで行くんかわからんけど、このサービスエリアから離れられるだけでもええわ。
「はい、はい」
「ありがとうございます」
「すみません、私のカバンめっちゃでかいんです」
「すごい!」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
「ありがとう」
「さようなら」
みんながドリンクくれるんやけど、それを入れる場所が体の中しかないんや。
めっちゃええカップルに会えたわ。「私らと一緒に来て、そっから北京まではバス乗ったら?」って言うてくれて、そうしたいなあって思ったけど、まだこのテント使い切ってへんし、ヒッチハイクすると決めたんや。一週間かかるかもしれんけど…いや、一週間もかかったらあかん。一週間以内に漢南に戻らなあかんのや。
それに、新しいヒッチハイクの戦略考えたんや。翻訳アプリ使って「イギリスから来ました、ヒッチハイクしてます」って説明する代わりに、ただ人に近づいて…「ねえ、どこまで行きますか?」「イギリスから来ました」「あ、イギリスですか」「どこまで行きますか?」「ここで働いてます」「そうなんですね」「ほな、また」って感じで。
さっき言うてた通り、失礼な中国人に邪魔されてもうた…冗談やけど、ほんまにええ人やったで。ただ人に近づいて「乗せてくれませんか?乗せてくれませんか?」って言うだけ。それだけや。
計画としては、サービスエリアでしばらく過ごして友達作って、そっから東に向かう。それが新しい計画や。
「長沙、長沙、長沙、長沙」
この人が手伝ってくれるって。どうやって手伝ってくれるかはわからへんけど。問題は、分岐点まで送ってもらえへんことや。高速道路の上やから、そこで左に曲がる人があんまりおらんのや。複雑やけど、地図で説明したるわ。でも、別の道、秘密の道を見つけたんや。そこなら車があるかもしれん。見に行こか。
あった!高速道路の下をくぐって、私の行きたい方向に行く秘密の道や。
「私たち友達ですね」
「はい、友達です」
「オーケー、急がなあかんな」
「カバンをここに置きます」
なんか旅に連れて行ってくれるって。高速道路から離れられるんやったら、やってみよか。
全然わからへん。全然何がなんやらわからへん。
「上海、上海」
「はい」
「遠くから来はったんですね」
「どうしてそんな遠くに?」
「妻がここにいるんです」
「奥さんがここにいるんですね」
このトラック運転手さん、めっちゃ助けてくれとる。今、道路工事の仲間二人も拾うたとこや。
「私の家は陽陽です」
「陽陽か」
「長安」
「長安、次に長安行ったときは連絡しますわ」
「はい、はい」
「ありがとう兄弟」
「はい」
「ありがとう兄弟」
「会えてよかったです」
「気をつけて」
「ありがとう兄弟」
「ありがとう」
「ありがとう」
「はい、はい」
「はい、はい」
「さようなら」
全部持ってる?うん。「さようなら」
「また会いましょう」
「また会いましょう」
信じられるか?ここにも料金所があるんや。また料金所で大騒ぎになってもうた。
「みなさん、私は東に行きたいだけなんです」
「合法です。何回もやってます」
「優しすぎます。ありがとうございます」
「いや、これらはええ人です」
「危険じゃない」
「いや、いや、これらは大丈夫です。危険じゃないです」
「めっちゃ安全です」
この注目のせいで…この注目のせいで乗り物に乗れへん。
「こんにちは」
みんな私のことを笑っとる。
「あ」
「1、2、3、4、5、6人が仕事せずにここにおる」
「イギリスから来ました」
ありがたいんやけど、仕事の邪魔してもうて…
でも、考え直したわ。料金所大好きや。だって、自分の仕事を止めてまで私を手伝ってくれる人たちの集まりやからな。
この人が「ちょっと待って、手伝うから」って。
「はい」
「はじめまして」
料金所のみんな、ほんまにええ人らや。
中国のすごくええとこの一つ、そして私みたいな西洋からの外国人が来た時の特権の一つは、みんながこんなに親切で協力的なことや。世界中には、ある国に行っても完全に孤立してしまう外国人がたくさんおるんや。誰も助けてくれへんどころか、助けんように避けられたりする。
もし今、みんなが助けてくれへんような立場やったら、どんな気持ちになるんやろ…想像もつかへんわ。
「はい、北京に行きます」
昨日は、ヒッチハイクにとって最悪の日やった。最悪な場所ばっかりで、みんな反対方向に行くし、止まってくれた人も反対方向やったり、正しい方向でも断られたり。それに言葉の壁がほんまにきつなってきた。言葉の壁がめっちゃきついんや。
明日も同じやったら、もうバスに乗るかもしれん。バスに乗らなあかんかもしれん。
正直に言うて、昨日はあんまりよくない日やって、最後はほんまに挫折感があったんやけど、でも、めっちゃきれいなキャンプ場所見つけたんや。それで全部帳消しになった。見てみ?
料金所の事務所の中や。料金所の人らが「テント張るとこ探してるんですか?」って聞いてきて、「私らの休憩室の中に張ったらええよ」って言うてくれたんや。めっちゃええ人らやわ。桃くれはったし。桃くれはって、すごくうれしかった。
今日はもっとええ気分やし、もう一回頑張ってみよか。でも、彼らが言うには、シャトルバスが通ったら、北京まで半分くらいのところまで行けるシャトルバスに乗せてくれるって。
ほな、また始めよか。前に進むで。あんな日の後でも希望を失わんように、一番近いバス停に走って行きたくならんようにするんは難しいわ。正直、私の経験では、世界中どこでもヒッチハイクする方が、田舎の真ん中でバス停見つけて、正しい時間に正しい場所に行くバスを見つけるより簡単やと思うで。
「中国の真ん中の道端にある歩道、ええ感じやなあ」
「はい、はい」
「ありがとうございます」
「すごい、きれいな写真ですね」
料金所のええ人らが今も手伝ってくれとる。
「ありがとうございます」
最高の朝を迎えられたで。
「烏蘭まで行きますか?」
「はい、はい」
「あ、ありがとうございます」
「はい、はい」
「ありがとうございます」
「さようなら」
「北京に行きます」
これがチェンさんや。その時は知らんかったけど、チェンさんと私は強い絆と友情を築いて、彼は世界で一番有名な中国のトラック運転手になるんや。
「ありがとうございます」
「明、明さん」
「はじめまして」
「はじめまして」
「はじめまして」
「はじめまして」
「やった!」
「私は中国語、あなたは英語」
「そうそう」
「はい、はい」
「英語、英語」
「英語、英語」
「英語、英語」
「あなたは中国語」
「私はイギリス人です」
「何を運んでるんですか?」
この人、昔イギリス大使館の警備員やったんや。今は製鉄材料を国中に運んどるんや。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
めっちゃええ人や。トラック運転手の規則で、4時間ごとに20分休憩せなあかんのや。トラック運転手じゃないとわからへんかもしれんけど。
「ありがとうございます」
「はい、はい」
「スイカ、スイカ、スイカ」
私がどこに行きたいかについて、大きな誤解があったんや。北京に行くって言うとったけど,次の場所から次の場所へって言うてきたから、彼も次の場所まで連れて行くって言うてた。でも今わかったんやけど、ほぼ北京まで行くんや。河北省まで行くんやて。北京まであと300キロくらいのとこや。だから「ずっと一緒に来てええよ」って。
「はい、兄弟」
やったー!すごいわ。
「ありがとうございます」
このトラックで長い一日になりそうやな。ほんまにええ一日になりそうや。
「これが科学技術の力や。人類はどんどん進歩していく。私らは科学技術を楽しむ時代に生まれたんや」
9時間くらい運転して、何ヶ月ぶりかに緑とか木とか森を見とるわ。新疆におったときは砂漠やったし、その北の山も砂漠やった。そっからここまでずっと砂漠やったのに、見てみ。
中国で支払いするとき、全部アプリでするんや。今は全部アプリ。便利やな。一つのアプリで全部できる。完全に集中管理されとる?そうや。データも支払いも行動履歴も全部一つのアプリに入っとる?そうや。でも、めっちゃ便利なんは確かや。
ああ、そうそう。私の運転手の名前は洪国じゃなかったんや。洪国やと思ってて、一日中そう呼んでたんやけど、チェンさんやった。申し訳ない気持ちやわ。だって、10時間一緒に旅した後に「ところで私の名前はチェンです」って言われて。8時間前に名前聞いたときに洪国って言うたと思うんやけど…言葉の壁のせいやな。ともかく、彼の名前はチェンさんで、世界で一番好きな人の一人や。
昨日の夜は、チェンさんのトラックで一緒に寝たんや。
「おやすみなさい、チェンさん」
「こんにちは、チェンさんのトラックで寝てます」
テントを張る場所を探すの手伝ってって言うたら、「ここで寝たらええよ」って。二段ベッドがあるんや。最高やろ?この人大好きや。
「起きて、山の美しさを楽しみましょう」
「散らかしてすみません」
「太行山は中国の有名な山脈です。南北にずっと続いています」
「すごい、すごく美しいですね」
「チェンさん、すごいですね」
「中国人が日本と戦った時、最高司令官の同志が中国で亡くなったんです。存珍、存珍がここで亡くなったんです」
もっと悪いとこで目覚めたこともあるわ。
朝ごはん食べるで。
「うまい!」
「ありがとうございます」
「幸せです」
ほな、計画はこうや。チェンさんと一緒に荷物を降ろしに行って、それから北京まで300キロくらいのとこまで連れて行ってもらう。そっからヒッチハイクして、うまくいけば夕食までには北京に着けるはずや。
あ、山羊見て!山羊見て!
「あれ、山の上に山羊おるんですか?」
「はい、はい」
「山羊です」
「めっちゃかっこええ!」
トラック運転手らが荷物を降ろしに来とる。中国のトラック運転手の生活やなあ。この仕事、楽にはならんな。
これは鉄鋼を作るための何かの材料で、チェンさんはこれを国の片方から片方まで運んどるんや。何トンもの鉄鋼材料を運ぶために、こんな長距離を移動するんや。
ここ、完全に真っ黒やな。これはかなり興味深いわ。新しい国を旅してると、観光客が見るようなものは見れるけど、トラック運転手が鉄鋼材料を降ろす様子なんて見られへんやろ。これが本当の中国や。この人らが、この国を動かしとるんや。
めっちゃでかい格納庫の中に入って鉄鋼材料見るのは止めとこ。吸い込んだらめっちゃ有害かもしれんって気づいたんや。
「いけるで!」
ほな、こうなるんや。チェンさんが北京のめっちゃ近くまで連れて行ってくれて、そっから私は電車で北京に入るんや。なんでかって言うと、まず第一に、チェンさんの旅に付き合えたことは、私の旅をええ感じで締めくくれると思うんや。最初は万里の長城で始めて長城で終わりたかったんやけど、それは次回にしよか。
もう一つの理由は、私がくさいんや。4日間シャワー浴びてへんし、股間も洗ってへんし、服も臭いし、パンツも替えてへん…とにかくめっちゃ臭い。こんな体を誰かの車に乗せるのは、その人への罰になってまうわ。
だから1時間電車に乗って、1時間で北京に着くんや。チェンさんが降ろしてくれたら別れを告げて、そっから北京や。行くで、チェンさん!給料もらえたみたいやし、うれしいわ。行こか。
めっちゃ暑いな。チェンさんが駅まで歩いて連れて行ってくれとる。北京への最後の1時間の旅が始まるとこや。
「外めっちゃ暑いですね」
「そうですね、チェンさん」
「マジで!北京はここよりもっと暑いで」
「待って、待って、待って、待って」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「さようなら」
「愛してます」
「さようなら」
「さようなら」
世界で一番人口の多い首都の中心部に向かって旅を続けながら、舌の上に干し肉の味が残り、これまでの旅の重みが周りの空気に漂っとるような感じがした。この4日間の道のりと、それを可能にしてくれた人々のことを振り返った。料金所での親切な顔々、食事を提供してくれただけやなく道も教えてくれた警察官ら、そしてもちろんチェンさん。
こんな普通に見える人々の生活を垣間見る機会を得られたことに、私はなんて幸運やったんやろ。結局のところ、人類への信頼を取り戻させてくれるんは、こんな素晴らしい普通の人々なんや。
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